ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.304

はしご酒(4軒目) その五十五

「ヒト ト ナルベク カカワラズニ ト ガッコ ノ センセ」

 「人と、なるべく関わらずに、静かに生きていきたい」、という、私のこの思いを、誰も理解などしてくれない、それどころか、そんなことを思うこと自体、「甘え」などと揶揄されてしまう、そんなヒリヒリとした痛みを、誰に・・・、と訴える、あるヤングな女性の心の声が、耳にタコがへばりつくように、ベチャッとへばり付いたままだ。

 私は、この彼女の心の声を聞いただけでも、そうした声と向き合わなければならない学校の先生という職業になんて、絶対に就くことなどできないな、と、思ってしまう。

 そんな、生きる、ということの、その深みの中で蠢(ウゴメ)く、そうしたヤングなピーポーたちの内なる闇に、ひょっとしたら、人生を変えてしまうかもしれないようなナニかを、ポタリと落としてしまう可能性がある、というような職業に、私が就くなんてことは、まず、あり得ない。だからこそ、(Aくんは、残念なことに退職してしまったようだけれど、それでも)Aくんにも、そして、Oくんにも、そして、Zさんのご主人さんにも、私は、やっぱり、それは、スゴいことなんじゃないのか、と、心から思ってしまうのである。

 おそらく、いま、教育現場で、それなりのおエライ立場に就いておられる方々の、そのほとんどは(と言い切ってしまうことに、若干ながら抵抗はあるものの)、そのあたりの、とても繊細な部分を、ウマい具合に見事に処理し、やり過ごすことができた、立派なタヌキやらキツネやらなのだろう、と、申し訳ないが、どうしても思ってしまう。

 そんな心配ご無用の豪腕エリートたちのことは、この際、どこかにしまっておくことにしよう。

 私は、心優しき不器用な、「人となるべく関わらずに」な、そんな、ヤングなピーポーたちのプルプルと揺れる心と、虚心坦懐に、真摯に、誠実に、向き合う、絡み合う、シモジモであるエラクナイ学校の先生たちに、目一杯、心からエールを送りたい。(つづく)