ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.296

はしご酒(4軒目) その四十七

「シミル トイウ カンジ ガ スキ」①

 たとえば、酒が五臓六腑にしみ渡る、という最高にご機嫌に悦に入る、その瞬間の、その「しみ渡る」のその「しみ」、君なら、数ある「しみ」系漢字の中から、どれを選ぶ?、とAくん。先ほどからロックでチビチビやっている奈良の米焼酎が、よほどのお気に入り、ということなのだろう、おそらく。そのあたりからの気分一新の「しみ」質問、に、違いない。

 「しみ、しみわたる、しみる・・・、そめる、って漢字と、みじめ、みたいな、そんな漢字、の、二つぐらいしか、思いつきませんけど」、と私。

 「そめる、の、そめ、ね。それと、みじめ、みたいな、しみる、しみる、あ~、あの、しみる、か~、似ている似ている、たしかに、似ている」、と、ほんの少しハシャギ気味のAくん。

 ここだけの話、私は漢字が苦手だ。正確にキチッと覚えていない漢字は山のようにあるし、書き順だってメチャクチャである。でも、ひらがなよりはウンと好き。見た目の面白さもさることながら、「この人に歴史あり」的なドラマが、そこにあったりするものだから、なおのこと、好き。

 そんなに好きなら、得意分野にすればいいじゃない、と、Aくんにジャブ程度に改善命令を下されてしまいそうだけれど、そうは問屋が卸さないのが、世の習いなのである。(つづく)