ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.293

はしご酒(4軒目) その四十四

「ユトリ!」①

 「コレについては、かなり腹が立っている」、と随分とオカンムリのAくん。

 ほとんどの現場の反対意見を軽く無視して、三、四十年前に、この国が、自信満々にイニシアチブをとって、鳴り物入りで導入した「ゆとり教育」、そのゆとり教育に対する、この国の、あまりにも酷く理不尽な手のひら返しの離縁状に、憤りを隠しきれないAくんの、熱き語りの幕が上がる。

 それでも現場は、どうすれば、子どもたちの興味や関心や好奇心に、心地よい刺激を与えることができるだろうか、どうすれば、単なる点取り屋ではない、人としての更なる膨らみとか広がりとか深みとか、に、繋げていくことができるだろうか、と、あれやこれやと悩みながらも(文句やら愚痴やらを言いながらも)取り組んできたのだと、語気を強めながら語るAくんから、は、たしかに、その憤りの大きさも重さも、ズシリと感じ取れる。

 すると、突然の、学力低下の首謀者扱い。さらには、それどころか、子どもたちまでもが、「ゆとり世代」などと揶揄されてしまったりする始末。一体全体この国は、なぜにゆえに、こんな行き当たりばったりで無責任な教育政策に明け暮れることができるのだろう、と、熱く語り続けるうちに、さすがに憤りも腹立ちも、とっくにピークを過ぎて、すっかり呆れ果てたかのように見えるAくんに、どう声を掛けていいのか、しばらくわからないまま、ジッと静かに聞いていることしかできない私が、そこにいる。(つづく)