ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.275

はしご酒(4軒目) その二十六

「ガッコ ハ シャカイ ノ シュクズ」①

 「学校は社会の縮図、と、僕が教職に就き立ての頃、ある先輩教師に言われたことがある」、とAくん。

 巷では、この頃の学校は、とか、この頃の先生は、とか、というふうに、どうも、学校やら先生やら、を、社会から切り離して語られることが多いような気がする、という。

 学校だけが、先生だけが、落魄(ラクハク)していく、などということは、まずあり得ないわけで、仮に、落魄しているのだとしたら、それはおそらく、社会全体が落魄しているに他ならない、というのが、Aくんの、あのときに先輩教師が語った「学校は社会の縮図」に対する思いであるようだ。

 「社会が悪いから学校も悪くなるんだ、というふうにも聞こえますが」、と、今宵一番とも言えるほどの勇気をメチャクチャ振り絞って突っ込んでみる。

 「そうなんだよな~、まさにソコなんだ、ソコ。だから、学校現場から発信する、問題提起する、なんてことは、そうそう簡単には、できることじゃない」と、軽く吐き捨てる。

 「身内には甘い、などと、よく言われたりもしてますよね」、と、かなりの覚悟を決めて、しかも、調子にも乗って、畳み掛ける私。

 「ホントは、ぜんぜん甘くなんてないんだけどね、とくに今は」

 あまりにもAくんが、逆襲してこないものだから、拍子抜けどころか、なんとなくAくんのことが心配にさえなってくる。

 「みんな、なにかに怯えている、と言ってもいい」

 奈良の上澄みをグビッと呑み干し、ここでもう一度、落ち着いて考えてみる。

 Aくんは、一言も、社会が悪いから学校現場が悪くなった、なんて言ってはいない。にもかかわらず、いとも簡単に、私がそう思ってしまったこの思考のメカニズムは、一体全体なんなのだろう。(つづく)