はしご酒(4軒目) その二十四
「シンガタレッカーマン タンジョウ!」③
再び、ん~・・・、と考え込むAくん。
その隙に、もう一口、奈良の上澄みを味わう。かすかに感じられる上品な甘みも、スキッとシャープにキレていく、やはり、そんな、どこまでも爽やかな印象だ。
一方、AくんはAくんで、グラス内の氷が、少しばかり小さくなった黒糖焼酎をグビリとやる。焼酎が苦手な私ではあるが、たしかに美味そうには見える。そして、「その中で、最たる、でも、とくに、でも、ないけれど、このところ、ちょっと気になる劣化の素がある」、と、ユルリとした助走をつけるかのように、静かに語り始めたAくん。
「自然災害、頻繁に起こるよね」
「はい。ある程度、地震は致し方ない、とは思っていますが、パワーアップしまくりの台風には、納得できないものが、私にはあります」
「その原因の一つと考えられる温暖化は、僕も、即刻、地球規模で、その是正に向けた取り組みに着手すべきだとは思うけれど、仮に、そんなことができたとしても、結果を出すのには随分と長い時間が必要で、つまり、我々は、これから、そうした災害と、長く対峙していかなければならない、と思うんだよな」
あらためて現実を突きつけられたような気がして、ズンと胃が重くなる。
「そこで、大切になってくるものが、やっぱり、人が本来もっているはずの、アナログなチカラ、だと、思う」
災害時にこそアナログなチカラか~、たしかに、なんとなくわかる、気はする。
「そんなアナログなチカラを育む、高めていく、ことを、阻(ハバ)む、蝕(ムシバ)む、ものこそが、ちょっと気になる新手の劣化の素、かな」
なるほど、なんとなく腑に落ちる。
つまり、たとえば、巷で、高度な利便性をウリにして、ズンズンと幅を利かせつつあるベンリザウルス。そんな厄介な怪獣たちによって、アナログなチカラが萎(シボ)みに萎みまくった新型レッカーマンたちが、今後、ジュクジュクと次から次に誕生していくのではないか、という私の中のその危惧は、そう簡単には消去できそうにない、ということである。(つづく)