はしご酒(4軒目) その二十一
「モウイチド タカダワタル ノ ススメ」
たしかに、「吠える」ことも大事だと、Aくんは宣う。
ウジウジと、あれやこれや、居酒屋で愚痴ってみることぐらいしかできない私ゆえに、吠えることの、意義、みたいなものは、胃の隅のほうのキリリとした軽い痛みを伴いはするものの、とりあえず、理解はできる。
理解はできるけれど、なにか、どこか、シックリしない、だからこその、いま、もう一度、高田渡、なのかもしれない。
「たとえば、ガガガガガ~っと、という、そんな、よくある、反戦、ではない、けれど、充分に、反戦なのだ、という、そんな反戦の、そんな臭いがプンプンの、そんな高田渡なのだ」、と、Aくんは、そんなそんなと、ことのほか熱く、そして、ことのほか静かに、語ってみせる。
TVで、もちろん、それなりのセキュリティを利かせながら、いかにも、という毒舌を、批判を、妙に楽しげに、吐く、吠える、その手のタレントたちとは、一線を画す、高田渡という孤高のフォークシンガーをもう一度、と語るAくんの、その根っこの部分を支える、高田渡本人のサラリと脱力した言葉が、軽やかでいて、やはり、濃く、深い。
日常の風景を歌うことが、本当の反戦だと思う
(つづく)