ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.252

はしご酒(4軒目) その三

「シバイゴヤ ト デンパケイ」③

 私の「いいですね~」のその前に、「よし、じゃ、そうしよう」、と、Aくんは足早に夜道を突き進む。そのあとを遅れまいとしながら、何度か右に左に角を曲がると、そこだけがボンヤリと明るい場所に、ようやくたどり着く。

 まだ大丈夫?、という声とともにその店内にスルリと入って行くAくんを追うようにして、私もその暖簾をくぐる。

 いらっしゃい、と、割烹着姿の女性のふくよかな声。

 少し間をおくように、カウンターの奥から、よっ、久しぶり、という(おそらく常連さんであろう)少ししゃがれた男性の声。

 カウンター席だけの、こじんまりとした小料理居酒屋というその佇まいが、居心地の良さを充分に感じさせてくれる、そんな店である。

 とりあえずビール、とAくん。

 入ったすぐ左側に手前から奥へと短く伸びたその小さなカウンターのその手前の端から順に腰を下ろした私たちの前に、瓶ビールと小振りのグラスが2つ、そして、少し遅れてお通しが、穏やかな酢の香りとともに静かに置かれた。(つづく)