はしご酒(3軒目) その六十八
「デモ ト シカ ト トキドキ オンシ」④
すると。
「その、『デモシカ先生』という言葉の反対側のエリアに、『恩師』という言葉があるように思うのだけど、もう、死語かな」、とZさん。
恩師、か~。
死語とまではいかないけれど、その一歩手前の絶滅危惧種の危うさは、充分に漂ってはいるかな。
普通に地味で真面目なタイプであった私は、学校の先生にソコまでお世話になったという記憶がない。ただ、あの時のあの先生の一言で救われた、勇気が湧いた、決心がついた、というようなことは、ソレなりにあったと思う。
そこで。
「振り返ってみて、恩師、おられましたか?」、と、両脇の二人に尋ねてみる。
う~ん、と、軽く唸り始めたZ’さんを横目に、Zさんが、口を切る。
「いたわ。中学一年生のときに習った英語の先生。ホントにいい先生だったのよね~」
「いい先生ですか・・・。でも、なぜ、その先生が、恩師なのですか」
すると。
「それはね」、と、遠い昔の記憶をたぐるように、そして、ちょっと嬉しそうに、ユルリユルリと語り始めたZさんなのである。(つづく)