はしご酒(3軒目) その五十三
「キソウ テンガイ コドク」①
まだまだ語る、今宵の熱き、Z’さん。
「奇想天外。奇想天外と思われるぐらいの発想が、閉塞感塗(マミ)れのこの国の、この星の、未来を、切り開くんだよ」
教え子たちとの同窓会帰り、ということもあって、多分、いつもより、若者たちに対する思いの熱量が多めなのだろう。
奇想天外。
奇想天外、か~。
いい響きだ。
けれど、管理されまくったこの社会の中では、「奇想天外」、どうなのだろう。
管理社会と、奇想天外。
相性がいいとは、到底、思えない。
それでも、Z’さんは、「カチコチの大人たちの脳ミソでは、到底、考え付かないような奇想天外な発想こそが、若者たちの特権であり、武器なんだ」、と。
若者たちの、特権、武器、か~。
たしかに、そうかもしれない。
そうかもしれないが、コレだけ、ブナンミンやら、ホシンヒューマクンやら、イシバシヲタタイテイイコトスル~マンやら、が、市民権を得ながら増殖の一途を辿(タド)る、「ナガイモノニハ、マカロニウエスタン」な現代社会においては、どうしても、そういった奇想天外なヤングピーポーたちは生き辛いのでは、と、思えてならないのだ。
「社会の中で、組織の中で、浮いてしまいませんか?、孤立化してしまいませんか?」
そう、思い切って尋ねてみる。
すると。
「するかもしれない。場合によっては、重く深い孤独感に苛(サイナ)まれることもあるかもしれない。けれど、それでも、僕は、奇想天外に期待したい」
そう、Z’さん、キリッとキッパリ答えてみせる。
すると。
そんなキリッとキッパリなZ’を横目に、私の頭の中を、あたかもストロボのようにパッパッパッパッと、秒速で、和単語カルテットが過(ヨギ)っていく。
奇想
天外
天涯
孤独
奇想
天外
天涯
孤独
Zさんに、またまた前頭葉の老化だと指摘されてしまいそうだけれど。(つづく)