ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.214

はしご酒(3軒目) その四十三

インスタバエ デハ インスタバエナイ」

 Z’さん、唐突に、ナニを思ったか、「蠅(ハエ)は集 (タカ)るがゆえに評判を落とす」理論を、静かに展開し始める。もちろん、Zさんは、聞こえないフリである。

 酵素で溶かしてチュ~っと吸いつつゲロも吐くしウンチも垂れる、という蠅たちの実にワイルドで個性的な食事スタイルに触れながら、なぜにゆえに評判悪化の道をひた走るのか、という謎を解き明かすZ’さん、なのだけれど、蠅は蠅で生活も生命もかかっているわけで、そこまで評判が悪いと、さすがに、なんとなく、同情的にならなくもない。蠅に、それを望むのは酷なことかもしれないが、でもやはり、食事マナーが悪すぎる。

 そんなZ’さんのその熱き語りを聞いているうちに、ほとんど忘れかけていたあるニュースのことが、フッと頭の中をよぎる。

 腹を空かせた若者たちに、安くて美味いボリューミーな大盛りカツ丼を何十年も提供し続けてきたある小さな街の食堂から、そのメニューが消えたという。そのニュースを耳にして、その理由が「インスタバエ」たちのマナーの悪さである、ということを耳にして、なんともいたたまれない気持ちになったことを、思い出す。

 インスタ映えも結構だが、インスタ蠅ではインスタ映えない、ということを、肝に命じておく必要があるのではないだろうか。

 食事マナーは、大事なのである。(つづく)