はしご酒(3軒目) その三十八
「シタテナオシ ト ヨナオシ ト ジコナオシ」
そんなお爺さんの大島を眺めているうちに、さらにもう一つ、あることを思い始める。
それが、直し。
仕立て直しの素晴らしさは、その「直し」が、そのもの自身に向いているところにある、ように思える。言い換えれば、「自己直し」。それ自身が磨かれ、もう一度輝く、まさに「reborn (リボーン)」、だからこそ素晴らしい、そんな思いが、プクプクと沸き起こってきたのである。
正義も平和も愛も、揺らぎに揺らぐこの今、それだけに尚更のこと、仕立て直されたお爺さんの大島のように、まずは自己直し、こそが大切なのではないだろうか。
にもかかわらず、そうした自己直しとは真逆の、そのもの自身に向かわない「直し」が増殖しがちだ。
他者に向かう直しの危うさは、偶発的にパワーアップした怒りが歪んだ正義を掻き立て、やがて、自分の中から冷静さを消し去り、「暴力」という愚行を引き起こす、という、まさにソコにある、と、思えてならないのである。
とはいうものの、納得がいかないことが、あまりにも多すぎて、文句の一つ二つ三つ、ボヤいてみたくなるのもまた人情。そんなときは、やはり、思いきって(思い切らなくとも)ご贔屓の(ご贔屓でなくとも)その暖簾をくぐり、居酒屋専属の世直しアナリストになることを、お勧めする。
是非、一度お試しを。(つづく)