はしご酒(3軒目) その二十
「コテサキ ノ カネモウケ ノ コウザイ」①
そして、実はもう一つ、気になっていることがある。
凄まじい技術と労力と時間をかけて織り上げられた反物が高く評価され、仮に高額な値が付いたとして、はたして、その職人に、あるいは、その職人たちの組織に、どれほどの額が支払われているのだろう。
もちろん、こうした心配ごとは、着物ワールドに限ったことではない、のかもしれない。
たとえば、コーヒー豆ワールド。
国際的な問題としてコーヒー豆の「フェアトレード」が取り沙汰され始めて久しいが、この今もなお、現地(現場)で働く人たちに真っ当な対価が支払われていないのではないだろうか、などと、考え出すと、どうしても心の内側の深いところがザワザワとしてきたりする。
地道に働く人たちがいる。その一方で、そうした人たちを、低賃金で雇える労働力としてしか見ない、見れない、そんなフラチな人たちが、仮にいるとしたならば、必ずや、多くの、取り返しがつかない悲劇を、生むに違いない、と、私は目一杯心配している。
取り越し苦労、無用の不安、であれば良いけれど、必ずしもそうとも言い切れないところが、実に厄介なのである。(つづく)