ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.184

はしご酒(3軒目) その十三

アシモト ニハ オヨバナイ」②

 そして、Zさんの今宵の草履。

 右足を軽く手前に引き、踵(カカト)をウッスラ浮かすポージング。おかげで草履の全体像が見えやすい。

 ザラッとした粗めの淡い茶系の色味が、レトロな刺繍が施されたオレンジ色の鼻緒と絶妙にマッチして・・・などと勝手に心の中で評論していると、「なにかお探し?」とZさんに。瞬時にイヤな汗がジンワリと毛穴から滲み出るのを感じる。

 変に言い訳するのも、と、揺れる気持ちを今一度引き締め直して、いい意味で開き直って正直に、「ステキな草履だな、と思って」と。

 すると、「あ~これね、いいでしよう、ちょっと自慢の逸品なのよね~」と、にこやかに返すZさん。さらに、「ラオス産の科布(シナフ)、樹皮からの繊維で織られた古代布、だからこその風合いが魅力なの」、と、補足する、その表情に、なんとなくホッとする私。ひょっとして、Zさん、私が見えやすいように、意図的に、ちょっと手前に右足を、などと、またまた勝手な推測と思い込みの妄想に浸る。

 とにもかくにも、「足元、には、及ばない」という足元の美学は、古今東西ラオスさえも巻き込むそこかしこで輝きを放っている、ということであるようだ。(つづく)