ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.183

はしご酒(3軒目) その十二

アシモト ニハ オヨバナイ」①

 身近な着物繋がりの一つに「草履(ゾウリ)」がある。

 この草履もまた、もちろん奥が深い、に、違いないなどと思いつつ、できる限りさりげなく、Zさんの足元に目をやる。

 以前、商業カメラマンである友人が、足元が大事なんだよ、と、よく言っていたことを思い出す。

 その彼に、よせばいいのに、足元になんて誰も注目していないでしょ、と、軽い気持ちで言い返したことがある。その私のその不必要な一言が、なんと、あろうことか、彼の心の中のスイッチを押してしまうことになる。

 足元の美学を軽んじる者は足元に泣く、足元を笑う者は足元に笑われる、人類みな足元、みたいな話を、アレやコレやと熱く語られ、ホトホト疲れ果てた私は、安全領域を越える量の酒をグビグビ呑み、見事なまでのヘロヘロ状態に。十年ほど前の、足元絡みのホロ苦い思い出である。

 その時の彼の、足元にも及ばない、ならぬ、足元には及ばない、足元だから及ばない、という、燃えたぎる「足元にこそ美が宿るのだ」理論にほだされて、それ以来は、ちょっとだけマシな靴下と靴を履くように、心掛けてはいる。(つづく)