ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.182

はしご酒(3軒目) その十一

「キモノツナガリ ノ ススメ」

 Zさんにとっての着物が、単に着物だけにとどまらず、さらなる様々な日本の文化に繋がり、広がり、その相乗効果に、ますますワクワク感が止まらない。という、そんなこんなのイメージが、私が虜になりそうな、私が思うところのZさんワールドなのである。

 「歌舞伎や能、その美しい着物を見るだけでも、充分に楽しめるのよね~、わかる?、この感じ」、とZさん。

 能楽ならば、幸い、結構見る機会があったりしたので、よし、と思い、「わかります!」、と、かなり力強く答えてみせる。

 「自信満々ね。歌舞伎とか能とかに、興味がおあり?」、とZさん。

 照れつつも、「はい。それほど詳しくはありませんけど」、と私。

 「日本の文化は、扇のような気がしているのよね~。古典芸能も、モノづくりも、扇のように、その要(カナメ)のところでは繋がっている。だから、その一つひとつが、とても大切、・・・なんだけど」、とZさん。

 ・・・なんだけど?

 そういえば、そこかしこが、職人さんたちの高齢化で、まさに絶滅危惧職である、みたいなことを、悲しいかな、結構、耳にする。おそらく、一度消えてしまえば、もう二度と復活などしないかもしれない、いや、しないに違いない、というか、できない。それほどのレベルの高さであり、習得するのに信じられないほどの膨大な時間を有する、ということだ。

 私は、もし、もう一度この世に生まれたらば、もう二度と学校になんて行きたくない、と、漠然とながら、コッソリ、思っている。漠然と、しかも、コッソリと、などという程度では、仮にもう一度生まれたとしても、結局は、ナニも、始められないのかもしれないけれど。

 でも、やはり、物心の付く頃から、脇目もふらず、私の一生を懸けて職人の技のその究極の境地に挑みたい。という、思い、野望、なかなか、どうして、そう簡単には消し去れそうにない。(つづく)