ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.126

はしご酒(2軒目) その二十八

「コノチガイ ハ オオチガイ」①

 あの、Aくんと私に対する「脳の前頭葉の老化」発言で、一瞬にして、私たちの敵と化した(とはいえ、もちろん、「愛しき敵」なわけだけれど)、Aくんの友人の、実に失礼な奥さんは、ことのほか「着物(キモノ)」を愛していて、私の中の奥さんの印象もまた、100%、艶(アデ)やかなる「着物姿」である。

 そんな奥さん(って、どこのどの奥さん?。と、ヤヤこしくなってきそうなので、この際、「ZENTOYO」の頭文字、「Z」、から、「Zさん」と呼ぶことにしよう)の、「着物は、溢れる喜びの玉手箱」と宣って憚(ハバカ)らない、その着物愛、は、私ごときには、なかなか理解できない「境地」とさえ思える。

 そう、境地。

 そして、その境地は、気持ちいいぐらい、熱い。

 そんな着物愛爆発のZさんから、こんな話を聞いたことがある。その話を、今、思い出した。

 Zさんには、憂(ウレ)いているコトがある、という。それは、彼女が大好きな着物の未来についてである、らしい。

 この国の、類(タグ)い稀なる技術と美意識に裏打ちされた、文化であり、伝統であり、心である、「着物」というものが、この国の人々の意識から離れていく、生活から消えていく、そのコトを心から憂いているのです、と、重たく語っていた彼女の表情を、今でも、リアルに思い出すことができる。

 ところが、そんな折りも折、珍しく、嬉しいニュースが飛び込んできた、というのだ。

(つづく)