ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.118

はしご酒(2軒目) その二十

「ローカルカラー ハ アイデンティティー」

 「精米歩合90%の、生まれも育ちも古い木樽、という、呑む度(タビ)に味が変わる暴れん坊、どうです?」、とお兄さん。

 先ほど、レアものの泡盛をパスせざるを得なかっただけに、「もちろん、いただきます」と、すぐさま返す、私。

 フフフフフ。眼前に佇むOくん絶賛のイカの塩辛に、合うにきまっているとホクソ笑む。

 お兄さんオススメの暴れん坊は、ラベルまで暴れん坊で、なかなかのインパクト。ますます興味が湧く。そして、小振りのガラスのお猪口に注がれたその顔つきもまた、充分以上に暴れん坊なのである。

 「いいですね~、暴れてる、暴れてる」、グイッと一息に呑み干した私は、お兄さんに、そう告げた。すると、「いいでしょう、暴れぐあいが、いいんですよね~」、とお兄さん。

 突然、なぜか、大学時代のテストで出題された、ある記述式問題のことを思い出す。

 「ローカルカラーを説明しなさい」

 不覚にも、その意味どころか、そのコトバそのものさえも全く知らなかった私は、まず「田舎の色」と直訳し、そこから、アレやコレやと思考を巡らせ、辿り着いた先は、「微動だとしない固有のもの」であった、と記憶する。

 今、「微動だとしない固有のもの」が爆発しているような、この暴れん坊を呑みながらシミジミと思うのは、ローカルカラーとは、アイデンティティーなのだな~、ということである。

 私は、アイデンティティーこそが、この上もなく大切なものであると、以前からしつこく思っている。

 アイデンティティー臭を撒き散らすイカの塩辛とローカルカラーな暴れん坊酒との奇跡的なコラボレーションに、(酔いが回ってきたのか)ほんの少し涙ぐむ、私なのであった。(つづく)