ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.113

はしご酒(2軒目) その十五

「ミワク ノ ダイナマイト センベロ シティー」②

 私のイチオシの街の一つでもある「コザ」。その中心街から少し離れたところに、馴染み(とはいっても、年に一度顔を出せればいいかな~程度ではあるのだけれど)の居酒屋がある。その店で初めて「センベロ」というコトバを耳にした。なんのコトやら全くもってわからなかったが、周囲をジックリと観察しているうちに、なるほど、「千円でベロベロ、庶民の味方」システムのコトなのだな、と、徐々にわかってきた。

  そう、千円でベロベロ、庶民の味方、システム。

 当然のごとく、お客さんのほぼ全員が見事なまでに「センベロ」を注文する。以前、たまたま隣り合わせになったウチナーンチュの気のいいおじさんなどは、なんと、居酒屋泣かせの3連続センベロ作戦を決行したりしていた、ぐらいである。

 お客さんの、おおよそ100%がセンベラー、センベリスト、であるといっても過言ではない沖縄。私は、そんな沖縄を、とりわけコザの街を、愛を込めて「ダイナマイトセンベロ シティー 」と呼んでいる。

 そんな、魅惑のダイナマイトセンベロシティー。風土が人をつくり、人と人が絡みに絡み、ソコに、泡盛が、オリオンビールが、気持ちよくベチャベチャっと纏(マト)わり付いて、街が熱くつくられていく、という、この、ただならぬチャンプルー感。まさに「チビラーサン(すばらしい)!」なんだな~。

 そう、ダイナマイト、センベロ、シティー

 ん?

 センベロ?

 あ、あ~、センベロ。

 懐かしの映画『フラッシュダンス』のサントラとしても大ヒットした♪マニアック。その作詞作曲を手掛け、ギターを掻き鳴らしながら、かなりのアップテンポで気持ち良さそうに歌っていたミュージシャン、マイケル・センベロのことを、なんとなく、今、突然、思い出した。全くもって関係ないけれど。

 余談ついでに、もう一つ。

 致し方ないかな、と、思いはするものの、なんとなく、ちょっと寂しく感じる、その、もう一つの余談。ソレは、つい最近、その居酒屋にお邪魔させてもらった時のコト。

 店内の壁にクールな貼り紙が。

 「センベロは、お一人様一回限り」

(つづく)

 

 

 

 

追記

 ある「せんべろの聖地」が、再開発ビルとタワマンの波に飲み込まれてしまった、という。理不尽で無個性の、あの、いつもの再開発、の、犠牲が、ソコにも。おそらく、賃料が高く、今までのような個人で頑張ってきた居酒屋が、そうした再開発ビルに入ることはできないだろう、と、店主たちは嘆く。

 街の個性が、魅力が、有無を言わせず、強引に、消し去られていく。

 せんべろの神さまも、きっと、落胆と憤りでハートが掻き乱されているに違いない。しまいに、天罰が下る、かも。いや、下るね、間違いなく。