ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.100

はしご酒(2軒目) その五

「アンテイ ワンダーワールド」②

 「安定したいんかな~」、とOくん。

 「安定?」、と私。

 「公務員は、不安定に弱いっちゅ~こっちゃ」、とOくん。

 「不安定?」、と私。

 「不安定やと、不安になってまうんやろ」、とOくん。

 「不安?」、と私。

 「せやから、とにかく無難に、無難に、日々、過ごしたいんとちゃうんかな~」、とOくん。

 お~、でました~ブナンミン。

 荒波に抗うことなく無難に無難に、が、信条の、ブナンミンだ。

 「でも、それなりに安定しているでしょ、公務員なんだから」、と私。

 「安定への欲にはキリがないっちゅうことやな。より良い給料とか肩書きとか、いろいろあるやん」、とOくん。

 より良い、給料とか肩書きとか、か~。

 「安定」の定義は、難しい。それぞれの価値観によって随分と変わってくると思うからである。それもまた「個性」ということなのかもしれない。となると、姑息と批判されようが、寄らば大樹の陰と揶揄されようが、自分なりの安定を望むこともまた致し方のないことのような気もする。不安を感じながら、抱きながら、生きていくなんて、どう考えても辛すぎる。

 しかしながら、Aくんなら、「己の価値観そのものを変えないとダメだ!」、と、宣うのだろうな、きっと。

 たしかに、一人ひとりが、自分自身の安定を最優先にして、ただひたすら、そうした安定を求めているうちに、皮肉にも、世の中全体が不安定になってしまう、などというコトは、充分にあり得る。そして、結局、回り回って、あれほど安定を求めていたはずの自分自身にも・・・。

 不条理といえば不条理だが、そういうモノであるような気がする。

 つまり、とかくこの世は、安定どころか、一寸先は、「グルリと回って不安定ワンダーワールド」だということだ。

(つづく)