はしご酒(2軒目) その五
「アンテイ ワンダーワールド」①
唐突ついでにOくん、「官僚だけのことやあらへんで~」、と。
か、官僚だけのコトや、あらへんで~?
「人事、人事」
じ、人事~?
「ナニからナニまで古臭い組織の、古臭い人事やっちゅ~ことや」
古臭い組織の古臭い人事、か~。
「組織も人事も、どっちもホンマに古臭い」
それ、なんとなく、わかるような気はする。
『安定』の代名詞とも言える公務員の世界。それゆえ、古臭い組織であろうがナンであろうが、一応、ソレなりにドウにか収まっているように見える旧態依然とした組織、運営、に、あえてメスを入れることなど、まず、あり得ないだろうから。
「各ポジションの人事も含めてやな、なにもかもが天界から降ってくるわけや、パラパラと」
パラパラと降ってくる、その感じも、わからなくはない。
ん~。仮にそうであったとしても、その天界が賢明で真っ当でさえあれば、ソレもアリか、とも思える。が、万が一にも賢明でも真っ当でもなかったとしたら、当然、悪しき忖度も、情けない媚(コ)びも諂(ヘツラ)いも、ブチュブチュと、ブチュブチュと増殖しまくっていくに違いない。違いないだろうから、組織としては、もう、衰退の一途を辿るしか、道は残されてはいないだろうな。
「以前は、まだ、下界から押し上げられていくような、そんなボトムアップな人事も、ソレなりにあるにはあったんやけどな~」
意外だ。
学校のような古臭く保守的な組織で、シモジモが人事に関わることができていたとは、マジで驚きである。
しかし、本来、そうしたボトムアップな組織こそが、チカラがある組織なのである。もちろん、ナニかとバタバタとはするだろうけれど、そうしたバタバタは質がいいバタバタであって、必ず、組織にパワーもエナジーも与えるはずだ。
そう、下から押し上げられていくような組織は、けっして、弱くも脆(モロ)くもないのである。
「せやけどや。天界を見上げて、天界を目指して、天界に気に入られるように、ただ仕事に邁進してたらソレでええやん、みたいな、そんなトップダウンな組織ってヤツも、ソレはソレでやり易いんとちゃうの、と、考えるピーポーも、おるには、おる」
おっしゃる通りだ。
人生を、単なる「出世」という勝ち負けで語る、語りたがるピーポーたちは、たしかに、結構、いる。
「ほんでやな~、『出世なんかどうでもええやん』などと宣うようなヤツらなんて、所詮、負け犬や~ん。って具合に、エラそうに言いよるわけや」
ま、ま、負け犬や~ん!?
負け犬なんだ、私は。なんだか、ちょっとムカつく。
「トにもカクにもやな、ソレぐらい、『くる』と『いく』は、絶望的に大違いってことや」
天界から降りてくる、の、くる。
下界から押し上げていく、の、いく。
たしかに、絶望的に大違いだ。
「上方の女性漫才コンビ『今いくよ・くるよ』は、あんまり好きやない上方のお笑いの中で、なんか知らんけど気に入っとったんやけどな~」
あ~、今いくよ、くるよ、か~。
私も、妙に好きだった。
あっ、そういえば、「いく」よ、いくよさんも、癌かナニかで亡くなられたな。
偶然とはいえ、その偶然に、偶然以上のナニかを感じてしまう。
Oくんのおかげで話が逸れてしまったが、どうしても、この社会は、「いく」ではなく「くる」に、まみれがちだ。そんなこの社会を悠々と泳ぐエラそうな巨大魚。その巨大魚にナンとしてもへばり付こうと、深い底の暗い闇から、「コビル」やら「ヘツラウ」やら「トリツクロウ」やら「アラガワナイ」やらといった新種のコバンザメたちが、ザワザワと、ザワザワと、ザワザワと泳ぎ上ってくる。
なぜ、こんなコトになってしまったのだろう。
民間企業ならば、それなりに理解はできる。しかし、公務員と呼ばれる方々が、とくに学校の先生までもが、どうして、そんな新種のコバンザメにならなくてはいけないのか。
そこのトコロが、私には、どうにもこうにも不思議で、不思議で、そう簡単には理解などできそうにない。(つづく)