はしご酒(2軒目) その三
「ゴールデン トライアングルパワー」
いい奈良の地酒があるというので、お願いする。
店主オススメの山廃仕込みのソレは、深みとキレが共存しているような、そんなチカラのある純米酒であった。
日本酒は、米と麹と水、だけからつくられる一つの奇跡だと、私は思っている。
考えてみると、ソロでもデュオでもカルテットでもない「トリオ」がもつ「ゴールデン、トライアングル、パワー」というものは、結構そこかしこにあったりするから、興味深い。
例えば、キュウリのぬか漬けは、キュウリと塩とぬか床だし、あのカステラは、玉子と小麦粉と砂糖で、餡子(アンコ)は、豆と砂糖と水だ。ちなみに、一世を風靡した「てんぷくトリオ」は、三波伸介と戸塚睦夫と伊東四郎である。あらためて、あなどれないな~、と、つくづく思うのである。
この「ゴールデントライアングルパワー」について、私の隣で、ワケギとイカのぬたをアテに、その山廃純米酒を美味しそうにチビチビとやっているOくんに熱く語っていると、店主のお兄さんが、「ちょうど今、ゴールデントライアングル状態ですね」、と。そう言われて、カウンターの左右に目をやると、たしかに、お客さんは、Oくんと私の二人だけのようだ。さらに「商売的には困るのですが、この感じが一番好きなんです」と、静かに、そして、ユルリ、と。
お兄さんの心をも虜にするゴールデントライアングル状態、か~。
この感じ、この感覚は、当然、人によって違うのかもしれないが、でも、ある、きっとある、「トリオ」がもつ「ゴールデントライアングルパワー」、間違いない。
すると、おもむろにOくん、小さなため息混じりに、ボソリと。
「この国の三権分立、立法、行政、司法は、残念ながら、ゴールデントライアングルパワー、と、いうわけには、いかへんみたいでんな~」
(つづく)