ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.94

はしご酒(2軒目) その壱

「アクイナキ ムシンケイ」②

 第2ラウンド、と、いうわけではないけれど、ココに来るまでの道中でのOくんの、唐突感溢れる問題提起を、そのままに、捨て置くわけにはいかない。

 そう、Oくんが言うところの「悪意なき無神経」と「悪意ある有神経」である。

 かなり乱暴に、わかりやすく言い換えるとするならば、「善良なる愚者(アホ)」と「根性が腐っている賢者(カシコ)」ということにでもなるのだろうか。なにやら、究極の選択、みたいな様相を呈してきたな。

 ん~、たしかに、興味深い第2ラウンドの幕開け、と、言っても差し支えないかもしれない。この両者、どちらも、なかなか、手強そうなだけに、なんだか妙にワクワクする。

 まず、前者の「悪意なき無神経」。

 悪意がないとはいえ、その無神経さで、深く傷ついた人もいるだろうし、取り返しのつかない事態を引き起こしてしまっているコトもあるかもしれないだけに、やはり、必然的に批判の対象になるのであろうと思う。思いはするが、後者とは、明らかに根本的なナニかが違う。

 では、その、後者である「悪意ある有神経」。

 ようするに、Oくんがモヤモヤっと不安を抱いているのは、むしろ、その、後者の、心の中はトンでもなくダークであるにもかかわらず、学習の成果を遺憾なく発揮して、悪知恵を働かせつつ無難にソツなくこなす、その、不気味な要領の良さなのだろう。

 そう、不気味な要領の良さ。

 不気味ゆえ、鼻をつまみたくなるような悪臭がプスプスと臭ってくる。

 するとOくん、小振りのグラスに注がれたビールをグビ~っと一気に呑み干すと、おもむろに、ボソリと、「酒を呑み交わすんやったら、悪意なんかドコにも見当たらない前者が、やっぱり、いいやん」、と。

 えっ。

 あたかも、まるで私の心の内側が見えているかのように、絶妙のタイミングでボソッと呟いたりしたものだから、驚いてしまう。

 たしかに、無神経にもホドがある、というコトもあるかもしれない。あるかもしれないが、仮に、「悪度(悪さの度合い)」などというモノがあるとするなら、さて、どちらの「悪度」に軍配が上がるか。ほんの少し考えただけで、その答え、比較的容易に、誰にでも、見えてきそうな気がする。(つづく)