ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.44

強肴 その十一

「ニガシウマシ クルシタノシ」 (Aくん)

 にがしうまし、くるしたのし。

 期待の新人漫才コンビ、誕生か!? 

 そういえば、「夢路いとし・喜味こいし」という滅法上手な正統派漫才コンビがいた。その二人が司会を務める視聴者参加型お買い物ゲーム番組『オリエンタルがっちり買いまショウ』も、茶の間の人気を集めていたように記憶する。

 さて、この「にがしうまし、くるしたのし」。もちろん、期待の新人漫才コンビのことではない。

 歯を食いしばって遮二無二(シャニムニ)ガンバって取り組んできたものの、ナンとなく楽しくなくなって、やる気も失せてきたな~、などと、思い始めた頃にビタッとフィットする、そんな、Aくん手づくりの、人生応援系プチ名言なのである。

 にがしうまし、くるしたのし。

 たいていのコトは、残念ながら、全部まるごと好き楽し!、などということには、まず、ならない。当然のごとく、ジワジワと、苦(ニガ)さも苦(クル)しさも芽吹き始め、育ち、鬱蒼(ウッソウ)と生い茂ってきたりするものだから厄介なのだ。

 しかし、しかしだ。むしろ、そうしたコトこそが人生なのであって、そんな苦さもまた美味し、そんな苦しさもまた楽し、と、声高らかに謳(ウタ)い上げるココロ優しきエール、それがこの、「にがしうまし、くるしたのし」なのである。

 そう、にがしうまし、くるしたのし。

 私たち一般ピーポーは、そう簡単にはそんな境地に至れないけれど、「にがしうまし、くるしたのし。にがしうまし、くるしたのし」と念じ続けていれば、ひょっとしたら、昨日よりも今日、今日よりも明日、明日よりも明後日、と、より極上の「美味し楽し」がコチラを向いて、ニッコリと、笑みを浮かべてくれるかもしれない。

 「ではまた来週も、オリエンタルがっちり買いまショウ!」

(つづく)