強肴 その壱
「タニンノ イケンデ ジブンノ ココロノ コエヲ ケシテハ ナラナイ」(スティーブ・ジョブズ)
Aくんは、お酒の量があるレベルに達したあたりから、著名人の名言シリーズに突入する。
名言、か~。
強がってはいるけれど、不覚にも弱気になってしまったり、迷ってしまったりした時には、どうしても、力強い精神的後押しが必要なのだろう。
しかし、私ごときが、いくら、「そのとおり、さすがAくん!」などと言ったところで、残念ながら、ほとんど精神的後押しにはならない、だけに、ココは、やっぱり、名言の出番、というわけだ。
そんな、Aくんイチオシ名言シリーズの中で、とくに印象に残っているのがコレ。
「他人の意見で自分の本当の心の声を消してはならない」
あのスティーブ・ジョブズが、どのような場面で、どういう思いで、そう言ったのかはわからないが、Aくんが、その言葉に、心底、勇気づけられているコトだけは間違いないようだ。
名言、か~。
そもそも名言などというものは、それを受け止める側のココロのもち方次第で、感じ方も受け取り方も随分と変わってくる、という思いが私にはある。受け止める側のココロがダークな垢(アカ)にまみれまくっていては、おそらく、さすがの名言も、不本意な受け止められ方をされてしまうかもしれない。
とは言うものの、だからといって、じゃ、なんだっていいじゃないか、ということにはならない。やはり、名言には名言としてのスペッシャルなパワーのようなモノが込められている、という実感が、たしかにある。ひょっとしたら、そのダークな垢も、刮(コソ)ぎ取ってくれるかも。
名言、か~。
落ち着きなく揺れ動くココロの中の空白の部分を、そっと埋めてくれるような、そんなフィット感抜群の名言を、人は、無意識のうちに探し求めている、のかもしれないな。(つづく)