ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.30

強肴 その壱

「タニンノ イケンデ ジブンノ ココロノ コエヲ ケシテハ ナラナイ」 (スティーブ・ジョブズ)

 Aくんは、お酒の量があるレベルに達したあたりから、著名人の名言シリーズに突入する。

 そう、名言、名言シリーズ。

 おそらく、Aくんといえども、不覚にも、ナニかの拍子に弱気になってしまったり、迷ってしまったりした時には、どうしても、力強い精神的後押しのようなモノが必要なのだろう。

 しかしながら、当然のごとく、私ごときでは、いくら「そのとおり、さすがAくん!」などと言ったところで、ほとんどナンの精神的後押しにもならない。というわけで、ココは、やっぱり、名言たちの出番ということになる。

 そんな、Aくんイチオシの名言シリーズの中で、とくに印象に残っているのがコレ。

 「他人の意見で自分の本当の心の声を消してはならない」

 あのスティーブ・ジョブズの、熱い、名言。

 彼が、どのような場面で、どういう思いで、そう言ったのかはわからないが、Aくんが、その言葉に、心底、勇気付けられているコトだけは間違いない。周囲の意見に振り回されまくる、そんな昨今であるだけに、たしかにビタッとくる、いい言葉だ。

 名言、名言、か~。

 そもそも、名言などというモノは、それを受け止める側のココロのもち方次第で、随分とニュアンスが変わってくるのでは、という思いが私にはある。受け止める側のココロがダークな垢(アカ)にまみれまくっていては、おそらく、さすがの名言も、不本意な受け止められ方をされてしまうのではないか。

 とはいうものの、だからといって、じゃ、ナンだっていいじゃないか、というコトにはならない。やはり、名言には名言としてのスペッシャルなパワーのようなモノが込められている、という実感が、たしかにある。ひょっとしたら、そのパワーで、ダークな垢も刮(コソ)ぎ取ってくれるかも。

 名言、そう、名言。

 だからこそ人は、落ち着きなく揺れ動くココロの中の空白の部分を、そっと埋めてくれるような、そんな、ビタッとくるフィット感抜群の名言を、無意識のうちに探し求めているのかもしれないな。(つづく)