ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.12

箸休め

「マダマダ ワカラナイコト イッパイ ダカラ スキデスヨ」

 ある、老練なベテラン藍染職人のドキュメンタリー番組をTVで見た。

 もともと日本の色というモノに興味があった私は、その、藍がらみの数多(アマタ)の色色々たちに、心底、驚愕したのである。

 しかしながら、そんな驚愕の世界も、安価な化学染料に押されまくって、置かれている状況は、かなり厳しいという。

 ナゼ、そうなってしまうのか。

 見た目の美しさだけでなく、身体にも環境にも良い、にもかかわらずだ。

 このままでは、おそらく、この、魔術のような色色々ワールドも、この国のピーポーたちに軽んじられ、忘れ去られ、やがては消え去ってしまうのでは、という危惧が、私の中に、あるにはある。しかし、仮に、不幸にもソンなコトになってしまったとしても、きっと、この国以外のファッション業界などで、間違いなくインターナショナルなパワフルカラーとしてメジャーな地位を獲得していくに違いない、と、思ったりもする。

 というふうに、目一杯楽観的に、そう思いたい、信じたい、という気持ちは山々なのだけれど、でもやっぱり、正直なところ、この体内から、プチナショナリズムみたいなモノを払拭できないままいる私は、ヨソで生き残ったとしてもな~、と、どうしても思ってしまう。

 ソレどころか、そんなコトをしていると、そんなコトしかできないままでいると、もう、この国の色、美、文化のみならず、その生みの親であるこの国自体までもが、あの、忽然と、この地球上から消えた鉄の帝国ヒッタイトのように、ある日、突然、消えてなくなってしまうのではないか、という危機感さえ覚えたりしている。

 あまりにも悲観的な、非国民的妄想ではあるけれど、こんな非国民的な妄想を抱いていた人たちが、きっと、絶好調であったあのヒッタイトにもいたのではないだろうか。ま、周囲からは、「なにバカなこと言ってんだよ」と、相手にされなかったかもしれないが。

 イロイロと、フラフラと、アレコレ思いを巡らしつつ見させてもらっていたわけだが、あの、老練な藍染職人の、あの、名言は染みた。

 「まだまだ、わからないこと、いっぱい。だから、好きですよ」

 さすが染めの匠である。言葉もまた、深く、深く、染みて染みて染みわたる。

 彼のような求道者とまではいかないまでも、ソコで満足するのではなく、更に一層、「追い求めたい」 、「突き詰めたい」、「最後の最後まで楽しくやりきりたい」、という思いが、この胸の奥深くから、フツフツと、フツフツと、沸き起こってくるのを感じた。(つづく)