ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.969

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百

「サイカイハツ ハ クサイカイハツ! クサイカイハツ?」

 慎重の上にも慎重を、緻密の上にも緻密を、公明正大の上にも公明正大を、期す。ぐらいでないと、ほとんどの開発にへばり付くダークなモロモロを払拭することなど、到底できるわけがない。と、Aくん。またまたオープニングからカッカと熱い。

 なるほど、開発なんてものは、ソレほど利権やら金(カネ)やらが渦巻く世界だということなのだろう。

 「僕は、そうした利権やら金やらが絡みに絡むのは、むしろ再開発の方だと思っている。とくに大都会の再開発は、その裏側を知るのが恐くなるほど深い闇を抱えているように思えてならないんだよな~」

 「だからこそ、公明正大の上にも公明正大を期す、ぐらいでないとダメなのに、どうしてもその裏側から手を伸ばし、権力に擦り寄り、権力とズブズブになりがちだ、ということですね」

 「そう、そういうこと。先ほども、あの頃を思い出しつつ恨みたっぷりに愚痴らせてもらったけれど、比較にならないぐらい小さな規模の学校みたいな現場でも、お金に絡むことはメチャクチャ細かくて、まずはとにかく、予算立てした計画通りに実施していかないといけなかったりする。でもね、とくに支援学校なんかでは、子どもたちの実態に合わせて臨機応変に授業内容をマイナーチェンジしながら展開していかなきゃならないはずなんだ。にもかかわらず、ソレを可能にする『融通』というモノには程遠いんだよな~」

 再開発の話題が、再び、先ほどの「癒着と融通」に引き戻されてしまったけれど、当時のAくんの気苦労だけは、イヤというほどコチラまで伝わってはくる。

 「だけど、致し方ないとも思っている」

 えっ!?

 「それは、そのお金が血税だから」

 あ~。

 そうだとは思うが、でもやっぱりジャマ臭そうだ。

 「たしかに融通は利かないし、ジャマ臭かったりするわけだけれど、でも、厳しすぎるぐらいが丁度いいのかもしれない」

 厳しすぎるぐらいが丁度いい、か~。

 「とにかく、コレだけは言っておきたい。再開発が『臭い開発』にならないように」

 く、くさい、臭い開発?

 「モラルの腐敗に繋がらないように、再開発のその周辺が、そうした腐敗の悪臭で満ち満ちてしまわないように、慎重の上にも慎重を、緻密の上にも緻密を、公明正大の上にも公明正大を、ナニがナンでも期さなければダメだということだ」

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.968

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十九

「ハシタガネ ナラ ハンザイ ニハ ナラナイ! ナラナイ?」

 「額の問題ではない。業者との関係は常にクリーンに。とくに金品の授受は絶対に御法度、くれぐれも気を付けるように。と、当時の校長に、耳にタコができるぐらい何度も何度も言われたもんだ」、とAくん。

 当たり前のコトを宣っておられるようにも聞こえるが、Aくんがまだ若かりし頃、あの当時独特の境界線上の微妙なコトで、結構、その校長先生とモメたらしい。

 「当時は、まだ、今みたいに事務室が、出された起案書に沿って業者に発注する、というシステムではなかった。少なくとも美術科は、僕が直接、業者に発注していたわけ」

 あ~。

 だから、境界線上の微妙なコトも起こり得るということか。

 「となると、どうしても、学校の先生と業者との癒着、起こりがちですよね」

 「癒着と言われてしまうとソレまでだが、おかげで、イロイロと融通してもらったんだよな」

 「でも、ソレ、癒着ですよね」

 「癒着じゃなくて、融通。当時は、業者からナゼか定価でしか買えなかった。マケてもらうことさえ癒着と、ひょっとしたら収賄と、みられていたのかもしれない。でだ、僕は、マケてもらえないなら数を増やしてよ、と、お願いしていたわけ。予備の画用紙やら粘土やらがフンダンにあるって、生徒にとってイイことだし」

 さすがに、予備の分まで教材費を徴収するわけにはいかないだろうから。

 「と、なると、おっしゃる通り、生徒にとって好都合な『融通』なのかもしれませんね」

 「だろ。でも、ナゼ、校長の耳に入ったのか未だにわからないんだが、呼び出されたわけよ、校長室に」

 「ダメなんですか。やっぱり、やっぱり癒着なんだ」

 「いやいや、ソレは違う。癒着じゃなくて、融通。ただ、肝心要の校長が、全くもって融通が利かなかっただけのこと」

 うわっ。

 「悲劇ですね、ソレって」

 融通の利かない上司ほど、タチが悪いものはない。

 「そう、悲劇。絵の具を忘れた生徒用に、いくつか絵の具セットも、コッソリ寄付をしてもらったりもしていたんだけれど、ソレも含めて全部、ダメ!、ダメ!、ダメ!、と、もう、ウルサイウルサイ、ホントにウルサかったんだよな~」

 あっ。

 「そういえば、先日、ニュースかナニかで、元首相ともなると、数百万円程度では検察は動き辛い、みたいなことを宣っていましたよ」

 「はあ?」

 「それ相応の額でないと、ナンとでもゴマカされてしまうらしくて」

 「な、なんだよ、ソレ。数百万円は端金(ハシタガネ)か?。違うだろ。ムカつくよな~。コッチは、画用紙や粘土や絵の具でも、癒着だ~、収賄だ~、などと、グダグダと、グダグダと、言われ続けていたというのに」

 「分相応の収賄、ってのがある。ということなんでしょうね」

 「収賄まで格差社会とは、マジで許せんな~、まったく」

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.967

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十八

「ヨウカイ ヘイトガエシ」

 「トドの詰まりは、結局、厄介なのは『情(ジョウ)』だということだな」

 「かもしれません」

 かのパスカルは、人間という存在を「考える葦(アシ)」と宣ったようだが、私は、むしろ、「情に振り回される葦」だと思っている。か弱き草は、いつだって情によって心を乱されるのだ。

 「もちろん、その『情』によって救われることもあろうかとは思う。思いはするが、残念ながらどうしても、情のために、正しきコトが責められたり、悪しきコトが賞賛されたりしてしまうんだよな」

 情。

 情、か~。

 「しかし、とはいうものの、情は『情(ナサ)け』。このセチ辛い世の中から、情けを全て排除してしまうことの怖さみたいなものも、私の中にはあるのですが」、と、遠慮しつつもAくんの、その懐(フトコロ)めがけて緩めのストレートを投げ込んでみる、私。

 するとAくん、私が投げ込んだその球を、実にコンパクトに打ち返すがごとく、こう返してくる。

 「仮に、君が言うように、『情』が『情け』であったとしても、まずは情を排して、クールに、論理的に、モノゴトを見つめる。そして、考える。そのことが絶対に大切なわけ。でもね、だからといってコレは、けっして冷淡なのでも、血も涙もないのでも、ない。ココを勘違いしてしまうと、なおさら情が絡んで、さらにさらにヤヤこしくなって、一層、厄介なことになる」

 冷淡でも血も涙もないでも、ない、か~。

 ふ~。

 あまりにも見事に打ち返されたものだから、ちょっとした戦意喪失感。に、見事なまでに苛(サイナ)まれる。

 「ヘイト!」

 えっ!?

 「そんな厄介な情が、最悪級に歪み切ったモノ、ソレが、ヘイト。ヘイト的口撃。ヘイトクライム。その主張の中身が正しいとか正しくないとかのその前に、その体質みたいなものの有り様(ヨウ)が、全くもって好ましくない。そして、好ましくないついでに言わせてもらうと、そういったヘイト的口撃は、気に入らないターゲットを一方的に殴り倒す、だけでなく、場合によってはヘイト的口撃の連鎖を生み、実りなき殴り合いをも誘発する」

 実りなき、ヘイトの殴り合い、か~。

 「歪み切った情に、まみれにまみれた妖怪『ヘイトガエシ』は、屈折した正義感と偏見と怒りをエサにして、ダークなパワーを身に付けつつ、息を殺しながらジ~ッと、我々人間の背後で、その殴り合いのチャンスを窺(ウカガ)っている、というわけだ」

 ふ~。

 つまり、妖怪ヘイトガエシを引き寄せるも寄せないも、結局のところ、我々人間次第だということか。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.966

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十七

「センキョデ エラバレル セイジカデ アレバ」

 「選挙で選ばれる政治家であれば、己の政治的決断を、行動を、国民に向けて発信しオープンにすることは、当然のごとく政治家の義務!」

 オープニングから随分と重量級のテイスト。

 「その人物が、いかなる人物なのか。どう考え、どう判断し、どう行動するか。の、その全てがオープンにされてこそ、その人物が、選ぶべき人物なのかどうかが判断できる、というわけだ」

 あらためて、そうだ、そうだった、政治家は選挙によって選ばれるのだ、と、気付かされる。

 「ナニかマズいことでもあるのだろうか。ソコのところをオープンにせず、コソコソと、という政治家が、結構いたりするからな」

 コソコソと、か~。

 国民に、ツマらない刺激を与えて、票を失うようなことだけは避けなければならない、とでも思っているのだろうか。

 「たとえば政府が、政治家が、強引ともとれる手法で、巨額の血税も投じて、ある政治的決断に踏み切ったとしよう」

 ひょっとして、国葬のことか。

 「ソレに対して、政治家たち一人ひとりが、どう反応し、どう動くか、は、選挙の際の貴重な判断材料になる」

 たしかにそうだ。

 普段は、ナニをしているのかをハッキリさせずに、選挙の時だけ、満面の笑みとヤル気で、こんなことをしてまいりました~、こんなことをしてまいります~、お任せください~、がんばります~、では、いったい、ナニをもって判断すればいいのか。申し訳ないが、少なくとも私には、そんなもので判断など、到底できそうにない。

 「ある、ある女性政治家が、早々に反意を示す。もちろん、このご時世だ。非礼。端(ハシタ)ない。スタンドプレー。あるいは、ブレない姿勢。早い決断。スジを通す。などなど、と、早速ネットはザワついて、思いっ切り賛否が分かれる。でも、でもね、その前に忘れてはいけないこと、ってのがあるわけよ。ソレは、政府が政府として、政治家が政治家として、決断して行うコトは全て、政治的である、というか、政治そのものだ、ということ。とくに、国葬。言うまでもないが、国葬なんてものは、もちろん単なる葬式ではない。にもかかわらず、コレを、あくまでも葬式なのだと思ってしまいがちなものだから、どうしても、『情(ジョウ)』にまみれた発言が、そこかしこから聞こえてきたりするんだよな~」

 「元首ならまだしも、そうでない者を国葬に、と、なれば、当然、政治的なナニかが背後で蠢(ウゴメ)いていると考えるのがノーマルだと、私も思います。しかし、世間を見渡せば、必ずしもそうではない。だから、先ほどの、女性議員に対する思いっ切りの賛否、みたいなことになったりするのでしょうね」

 「なんにしても、恐れずに、オープンにできる政治家は素晴らしいよ。国民は、そうした決断や行動を、クールに、ジックリと、判断材料にすればいい」

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.965

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十六

「キラキラシタ リネン ニ ギラギラ」

 「その『理念』に共感し、背伸びしてでも、無理やり身を清めてでも、皆と共に、成功に向けて取り組んでいきたくなる」、と、またまた得意の唐突感丸出しで語り始めたAくん。いつものごとく、ナンのことやらサッパリわからない。

 「な、なんですか、それ」

 「ソレがステイタスなんだろうな」

 「ス、ステイタス、ですか」

 「でも、悲しいかな、立派すぎて、結局、手に負えず、裏切ってしまうことになる」

 結局、裏切ってしまう?

 「所詮、背伸び。そもそも無理があるのだ」

 なんのことだろう。

 立派すぎるがゆえに、いくら背伸びしても、無理やり身を清めても、結局、手に負えない。場合によっては、裏切ってしまいさえする。というその理念とは、いったい。

 「たとえば、オリンピック。パラリンピック

 あ、あ~。

 「単なるスポーツ大会ではない。当然のごとくスポーツビジネスでもない。大いなる理念の下(モト)に理想を希求する者たちが集まって、一人ひとりが、一社いっしゃが、この星にとって、この星のピーポーたちにとって、そして未来にとって、きっと意味があるはずであろう成功に向けて、一心不乱に取り組んでいく、オリンピック、パラリンピック。こんな僕でも、その理念は、目的は、ホントに素晴らしいと思う。しかし、しかしだ。やっぱりそうは問屋が卸さない。オリンピックでさえ、パラリンピックでさえ、私利私欲のために喰いモノにしようとする者が、必ず現れる」

 な、なんと。

 「でもね、コレが人類の生々しい現実。という気も、してしまうんだよな~」

 「人類なんて、その程度だということですか」

 「悲しいことだけどね。人類ごときでは、その理念に追い付けない」

 理念に、追い付けない、か~。

 「そんな、キラキラとした大いなる理念に、せっかく関わるのだから、関わらせてもらうのだから、普通なら、その理念同様、皆、キラキラとしているはずなのに、していなきゃならないはずなのに、にもかかわらずギラギラと、ギラギラとしかできないピーポーたちが、どうしてもグチュグチュと湧き出てくる。ソレが人類というものなら、もう、怒りを軽く飛び越えて、絶望的な気持ちにさえ、なってくるわけよ」

 オープニングではナンのことやらサッパリわからなかったけれど、ようやく、どうにか、その全貌がハッキリと見えてくる。

 キラキラとした理念にキラキラできないギラギラなピーポーたち。たしかに絶望的な気持ちになってしまうほど、トンでもなく罪深い。(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.964

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十五

「ナハ タイヲ アラワス」

 「名称よりも中身が大事」

 ある政治関係者が、自信満々にそう宣う。

 「じゃ、決まりかけていた名称を、土壇場で変更する必要などなかったのではないですか」

 あるジャーナリストが、おもわずそう問う。

 どの角度から見てみても、そのジャーナリストのおっしゃる通りである。「名称よりも中身が大事」というのであれば、ソコまで名称に拘(コダワ)らなくてもいいのではないか。ひょっとしたら、拘らなければならない理由があるのではないのか。などと、どうしても勘繰りたくなってくる。

 「こども家庭庁、どう思われますか」

 「ん?。あ、あ~、ラストのラストで、その名称でモメていたヤツね」

 「そうです。たしか、土壇場で、ナゼか『家庭』が、くっ付いてしまったのです」

 「そうだった、そうだった。臭うよな~、怪しい臭いがプンプンと」

 「で、その時に、その関係者の中のトップクラスのエライさんが、こう宣ったんです。『名称よりも中身が大事』」

 「ん~、そりゃそうだけどさ~。でも、土壇場で変更したわけだろ。尋常じゃない『名称への拘り』、僕なんかはビンビンと感じるけどね」

 「ナニがナンでも『子どもファースト』でなきゃならないはずなんです。だから、だからこそ『こども庁』であったのに、突然、天の声かナニかが舞い降りてきて、土壇場で『こども家庭庁』。コレって、一部の人たちに圧倒的に支持されている『古き良き家庭のカタチよ、もう一度』ですよね。しかし、ソレとコレとは根本のトコロで全くもってナニもカも違うんです。にもかかわらず、ソコまで家庭に拘るなら、いっそのこと『こども庁』と『家庭庁』をつくればいいじゃないか、とさえ思ってしまう」

 「なるほど、いいアイデアだな、ソレ。真っ当な思考で考えることができさえすれば、その二つがベツモノだってことぐらい、誰にだってわかるだろ、普通。いいよ、いいと思う、賛成だ」

 「ご賛同、ありがとうございます。昔の人も言ってますよね」

 「なんて?」

 「名は体(タイ)を表す。って」

 「おっ、おぉ~!」

(つづく)

ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.963

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と九十四

「セイジリヨウ ノ リュウサジゴク」

 「よくもまあ、ナンでもかんでも政治利用してしまおう、と、するよな~」

 「政治利用、ですか」

 「そう、政治利用。場合によっては人の死までも、都合よく、政治利用してしまうのだから、恐れ入るよ、まったく」

 人の死、まで、政治利用か~。

 「それぞれが、それぞれの思いや考えの中で、その死を弔(トムラ)う。その、あくまでも一人ひとりの、自然発生的な『弔意(チョウイ)』という気持ちこそが大事なのであって、その弔意が、政治的に強要されることも利用されることも、絶対にあってはならないはずだろ。にもかかわらず、妙に堂々と政治利用だ。あげくの果てには、『弔問外交はコスパがいい』などと宣い出す者まで出てくる始末。コレって、いったい、どういうコトなんだと思う?」

 「う~ん・・・。政治家の、政治家のサガなのでは、ないでしょうか」

 「サガ?」

 「ナニもカも、政治のために使えるモノはナンでも使う。その裏側にある本音を、野望を、成し遂げるためならナンだってやる」

 「ナンでも使う、ナンだってやる、ね~。そもそも、そもそもだ。その弔意、その、弔意なんて言葉を、シモジモじゃないエライ人たちが宣い出すこと自体、政治利用なのかもな」

 弔意という言葉を宣い出すこと自体が、政治利用、か~。

 なるほど、たしかにそうなのかもしれない。Aくんも語っていたように、弔意は一人ひとりの心の中に自然発生的に沸き上がる純粋な気持ち。その気持ちは、ナニモノにも絶対に、影響されるものでも強要されるものでもない、と、私も思う。

 「おっしゃる通り、ソレ自体、政治利用なのかもしれませんね」

 「やだね~。本来、政治なるものは、そんな怪しげなモノじゃないはずなのに、なんだかいつのまにか、迂闊(ウカツ)に鵜呑みになんてしてしまったら、トンでもないコトに、タイヘンなコトに、なるような気がして仕方がないわけよ」

 タイヘンなコトに、か~。

 「ボ~ッとしていたら、アッという間にズルリズリズリズリ~ッと『政治利用の流砂地獄』に、吸い込まれてしまうかも、な」

 こ、こわっ。

(つづく)